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解説 001〜020


Q.011
 遺言の特別方式ってなんですか?

A.011

 『特別方式』は読んで字の如く特別な事情があって『普通方式』による遺言ができない場合に利用する方式です。 特別方式には、隔絶地遺言と危急時遺言の二つがあります。『隔絶地遺言』は、社会との交通を遮断されている 人が利用するものです。例えば、伝染病で隔離された人や刑務所に収容されている人(一般隔絶地遺言)、また船舶で航行中である人(船舶隔絶地遺言)などの利用があげられます。 『危急時遺言』は、死亡の危険が迫っていて普通方式による遺言ができない場合に利用するものです。 例えば、病気やケガなどで死亡の危険が迫っている人(一般危急時遺言)、遭難した船舶の中にあり死亡の危険が迫っている人(難船危急時遺言)などの利用があげられます。



Q.012
 日付を「平成13年7月吉日」と記載した自筆証書遺言でも有効ですか?

A.012

 自筆証書遺言には、遺言者自身が全文および日付を自書しなければなりません。 この場合に記載する日付には、年月日を記載しますが、その『 日 』までもが特定できるもの でなければなりません。よって、『平成13年秋分の日に』などというのは有効であると解されますが、 『平成13年7月吉日』といった記載は無効であるとされています。 『年月日』まで特定し、しっかりと記載するようにしましょう。



Q.013
 家庭裁判所の「検認」手続ってなんですか?

A.013

 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いをもって開封しなければ ならないとされています。ですので、公正証書遺言以外の遺言書がある場合には、 遺言者の死後、開封をする前に、直ちに家庭裁判書に遺言書を提出し、 検認といった手続を受けなければなりません。 遺言書の検認は、偽造や変造を防ぐために、家庭裁判書がその遺言の 方式・内容等を調査し、遺言を確実に保存するために行われる手続です。 遺言書を家庭裁判書に提出しなかった場合には、5万円以下の過料に処せられることとなっていますが、 かりに検認を受けなかったからといっても、遺言が直ちにすべて無効となるわけではなく、また逆に検認を 受けたからといって、遺言の内容等が法的に有効なものであると認められるわけでもありません。



Q.014
 恩師から土地を遺贈されたのですが、遺贈された土地の登記名義人を受遺者である私の名義にするにはどうすればよいのでしょうか?

A.014

 土地等の不動産を遺贈された場合、遺言者の相続人と受遺者が共同して遺贈の登記申請を行うことになります。 ただし、遺言執行者がいる場合には、その遺言執行者と受遺者とが共同して登記申請をすることになります。 遺言書に『誰某に土地を遺贈する』と明確に記されていたとしても、その遺言書を添付して 受遺者が単独で登記申請をすることはできません。このあたりの登記申請に関しては、学説でもいろいろと争いがありますので、 司法書士に依頼するようにしましょう。



Q.015
 家族に対する感謝の気持ちを記したいのですが、記載しても大丈夫でしょうか?

A.015

 遺言書に、家族に対する感謝の気持ちを記したりすることは、遺言者自身の自由ですし、むしろ望ましいことでしょう。 そのような記載は、法的に意味がないというだけであって、それらの記載によって遺言が無効になるといったようなことはもちろんありません。



Q.016
 夫婦で一緒に一つの遺言書を作成したのですが、このような連名での遺言は有効でしょうか?

A.016

 原則として、2人以上の者が同一の証書をもって連名で遺言をすることはできません(民法975条)。 遺言が共同してなされた場合、その一方の遺言に変更や無効事由があったときに、もう一方の遺言を どう扱うかといったような複雑な問題が生じることとなってしまいます。よって法は連名での遺言はできないとしました。 遺言は連名でなされているが、実質的には単独でした遺言であるとして、その効力を認めた判例や、 綴り合わされた証書を切り離すことができ、これによって独立の証書としてその効力を認めうるといった判例も出されては いますが、非常に例外的な事例です。夫婦で遺言をするときでも、それぞれ独立した遺言を作成するようにしましょう。



Q.017
 遺言者である私より先に受遺者が亡くなってしまったら、遺贈はどうなるのでしょうか?

A.017

 遺言の効力が発生するときに受遺者が存在していなければ、その遺贈は効力を生じません。 死亡した受遺者の子が代襲して遺贈を受けるということもできません。 この場合、遺贈されるはずであった目的財産は遺言者の相続人が相続することになります。 ただし、遺言者がこれと異なる遺言をしたときはそちらが優先されます。例えば、受遺者が 遺言者より先に死亡したときは、受遺者の相続人に遺贈する、と別に定めた場合には 受遺者の相続人が遺贈を受けることになります。



Q.018
 遺留分の減殺請求ってなんですか?

A.018

 遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人に留保された、相続財産の一定の割合のことをいいます。 遺言者は、原則として遺言によってその相続財産を事由に処分することが認められていますが、 その自由を無制限に認めてしまうと、本来の相続人の期待をあまりにも無視する結果となって しまい妥当ではありません。そこで法は、遺留分を定め、その範囲で遺言の自由を制限し、 遺留分を侵害された相続人は、その侵害された限度で贈与または遺贈の効力を失わせることが できるとしています。この請求を、遺留分の減殺請求(げんさいせいきゅう)といいます。。



Q.019
 祖父が自筆証書遺言を作成したいのですが、祖父自身では書くことができません。 家族が手を添えてあげたり、代筆したりして作成した遺言も有効ですか?

A.019

 自筆証書遺言は、遺言者の筆跡から遺言の真正を判断するため、自分で筆をとって 全文を自書するのが大原則です。手を添えて書いた場合すべてが無効となるとは 言えませんが、なるべく手を添えるようなことは避けるべきであるといえるでしょう。 また以上のことから、代筆によって自筆証書遺言を作成することもできません。 遺言者が自書することが困難な状態にある場合は、公正証書遺言によることをお勧めします。 公正証書遺言は、公証人に自宅や病院まで出張してもらって作成することもできます。



Q.020
 遺言でしかできないことがあるそうですが、どのようなことでしょうか?

A.020

 法は、生前にされたのでは紛争が生じることを防ぐため、遺言によってしかなしえない事項を定めています。 以下のような行為は遺言によってしかなしえません。
 1. 相続分の指定・指定の委託
 2. 遺産分割方法の指定・指定の委託
 3. 遺産分割の禁止
 4. 遺言執行者の指定・指定の委託
 5. 後見人の指定・後見監督人の指定
 6. 遺贈の持戻しの免除
 7. 共同相続人の担保責任に関する事項の変更
 8. 遺言の取消し
 9. 遺贈が効力を生じない場合の目的財産の帰属
   etc...


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