第1章 天皇
第7条 【天皇の国事行為】
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
1号 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
2号 国会を召集すること。
3号 衆議院を解散すること。
4号 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
5号 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
6号 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
7号 栄典を授与すること。
8号 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
9号 外国の大使及び公使を接受すること。
10号 儀式を行ふこと。
解説
本条には10個の天皇の国事行為が定められています。 各号を簡単に見ていきましょう。
1号の 「 公布 」 とは、広く国民に知らせることをいいます。 公布は、官報をもって行われ、
公布によって国法として施行されます。
2号の 「 国会の召集 」 は、一定期間に、議員を集めて国会を開始させる行為です。
3号の 「 解散 」 とは、議員全員に対して、その任期の満了前に、議員資格を失わせる行為です。
衆議院が内閣不信任案を可決し、衆議院が解散する場合などがあります。
4号の 「 総選挙 」 とは、衆議院の任期満了、解散による総選挙と、
参議院の3年ごとの半数改選 ( 憲法46条 ) による通常選挙のことをいいます。
5号の 「 任免 」 とは、 「 任命 」 と 「 罷免(*1) 」 のことをいいます。 「 認証 」 とは、
一定の行為が権限のある機関によって正当な手続きでなされたことを証明する国家機関の行為をいいます。
ただし、認証自体は効力発生の要件ではなく、
認証を欠いたからといって、その行為が当然に無効になるわけではありません。
6号の 「 恩赦 」 とは、訴訟法上の手続きによらずに、刑罰権の全部または一部を消滅させる行為をいい、
「 大赦 」 「 特赦 」 「 減刑 」 「 刑の執行の免除 」 「 復権 」 の5種類が定められています。
「 復権 」 とは、交通違反などで免許を取り消された者など、
法律の定めるところにより資格を失ったり、停止されている者に対し、その権利の回復を行うことをいいます。
恩赦には、法の画一的な適用や裁判の後に生じた社会事情の変化による不都合を解消したりする効果があるとされています。
7号の 「 栄典 」 とは、国家等に功労があった者の栄誉を表彰するために、特定人に対して認められる特殊な地位をいいます。
文化勲章や紫綬褒章などがその例として挙げられますが、実質的な決定権者は内閣であり、政令によってなされているのが現状です。
なお、 「 栄典 」 をこの国事行為に限定するものではなく、
国民栄誉賞や内閣総理大臣賞などはこの規定に違反するものではありません。
8号の 「 批准 」 とは、全権大使などによってすでに調印された条約に対して同意を与え、
その効力を確定させる行為をいいます。
実質的には、内閣が審査をして確定させます。 天皇は、この批准書に署名と捺印をして認証をします。
5号と同様、認証自体は効力の発生要件ではありません。
9号の 「 接受 」 とは、外交使節に対して、接受国として反対のない旨の意思表示(アグレマン)を与え、
その信任状を受ける行為をいいます。
10号の 「 儀式 」 とは、天皇が主宰して執行する国家的な性格を有する儀式をいいます。
即位の礼や、大喪の礼などの行事が代表的なものとして挙げられるでしょうか。
*1 職を辞めさせること。
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