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相続の基礎知識 < 9.相続の承認と放棄


■ 相続しないことも選択できます。

相続の承認と放棄

 相続によって相続人に帰属することとなるのは土地や預貯金といった財産(積極財産) だけではなく、被相続人が生前負っていた債務など(消極財産)もすべて承継することになります。  被相続人が多額の借金を負っており、財産が何もないといったような場合、 それを常に相続人が引き継がなければならないとすれば、大変酷な話です。  そのため、法は、相続人が自分の意思によって相続するか(承認) 否か(放棄)を決めることができるとしました。  なお、この相続の承認・放棄は、詐欺・脅迫によってした場合などを除き、 原則として取消すことはできません。

 相続の承認・放棄は、相続が開始したことを知ったときから3ヶ月の考慮期間内に しなければなりません。 単純承認の場合には、単にその旨の意思表示をすることで足りますが、 限定承認、放棄の場合は一定の方式のもと、家庭裁判所に対する申述をしてしなければなりません。
 この熟慮期間は、民法915条によって「自己のために相続の開始があったことを知った時から 3ヶ月以内」とされていますが、判例は、相続人が、 相続開始後1年近くが経過してから債権者の請求によって多額の債務があることを知って、 それから相続の放棄をした場合に、被相続人に相続財産が全くないと信ずるに相当な理由があるときは、 例外的に相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時または通常これを 認識できる時から起算するのが相当として、相続放棄の申請を認めています。
 なお、相続人が、自己のために相続の開始があったことを知ったときから 3か月以内に相続財産の状況を調査してもなお、 相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には、 申立てにより、家庭裁判所はその期間を伸ばすことができるとされています。

相続の承認
 相続の承認には、『 単純承認 』 と 『 限定承認 』 の二つのパターンがあります。

1) 単純承認
 『 単純承認 』とは、被相続人の財産の他、権利関係すべてをそのまま承継するものです。  前述した通り、単にその旨の意思表示をすれば足ります。  なお、積極的に単純承認をしない場合でも、次のような場合には単純承認をしたものとみなされます (法定単純承認といいます)。  ただし、次の要件に該当する場合でも、その相続人が放棄をしたことによって次順位で 相続人となった者が相続の承認をした場合には、その次順位の相続人の利益を保護するため、 単純承認したとはみなされません(民法921条)。

* 単純承認とみなされる場合(法定単純承認)

相続財産の全部または一部を処分したとき。
前述した3ヶ月の考慮期間内に限定承認または放棄をしなかったとき。
限定承認・放棄をした後でも、相続財産の全部または一部を 隠したり、消費したり、またはその財産があることを知りながら財産目録に記載しなかったとき。


2) 限定承認
 『 限定承認 』とは、被相続人から相続する債務を弁済する責任が、 相続する財産の範囲に限定されるといったものです。  プラスの財産よりマイナスの財産が明らかに多い場合には、 相続放棄をすればよいのですが、どちらが多いか分からない場合は、この限定承認を選択することもできます。  つまり、限定承認をすれば、相続した財産だけでその債務を完済できない場合でも、 相続人自身の財産でもってその不足分を支払う必要はなくなるのです。  清算の結果、残った財産があれば、相続人に帰属することになります。  この限定承認は、前述した考慮期間内にその財産目録を作成し、 限定承認する旨を家庭裁判所に申述してしなければなりませんので、 単純に相続放棄するよりも手続きは面倒になります。  また、相続人が複数いる場合は、限定承認は相続人全員が共同してする必要があります(民法923条)。

相続の放棄
 相続の放棄は、相続の開始後3ヶ月の考慮期間内に家庭裁判所に申立てることによってすることができます。  相続の放棄をすると、その者は最初から相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。  その結果、相続の欠格・廃除などでは認められていた代襲相続も、 相続放棄の場合には認められません

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