特別受益とは?
■ 相続人間の公平をはかるための制度ですが、争いの種になることも。
特別受益とは、被相続人からの、特定の共同相続人に対する、
①遺贈、
②婚姻や養子縁組のための贈与、
③生計の資本としての贈与
のことを言います。
共同相続人の中に、これらの遺贈や贈与を受けた者がいる場合、相続に際して、
この相続人が他の相続人と同じ相続分を取得するとすれば、不公平が生じます。
そこで、特別受益がある場合、遺産の総額に特別受益である贈与の額を加えたものを遺産とみなし
(これを「持戻し」と言います。)、これを相続分算定の基礎として各相続人の相続分を計算し、
特別受益を受けた者については、この相続分から特別受益分を控除し、
その残額をもってその特別受益者が現実に受けることができる相続分としました。
例えば、被相続人甲の遺産が8000万円あり、相続人はA、B、Cの3名であり、
Aだけが生前に自宅の建築資金として甲から1000万円の贈与を受けていたとします。
この場合、Aの受けた1000万円を持戻して、Aの相続財産は9000万円とみなします
(これを「みなし相続財産」といいます。)。
このみなし相続財産である9000万円を基にそれぞれの相続分を計算すると、
A、B、Cの相続分はともに3000万円となります。
ここで、Aは1000万円の特別受益があるので、
現実に受けることができる相続分は2000万円(3000万円-1000万円)となります。
その結果、B及びCは、ともに3000万円の相続分を受けることになるのです。
これで相続人間の公平が図られたことになります。
なお、特別受益分が相続分を超過する場合であっても、超過分を返還する必要はありません。
特別受益は、このように相続人間の公平をはかる制度なのですが、しばしば相続人間で相続分を争う種となることもあります。
生前に被相続人から相続人が特別受益を受けても、通常は領収書を発行するわけでもなく、
その金額も趣旨も明確ではありませんので、いったん争いが起こると、裁判などでは
長期化することもあります。相続人間での柔軟な話合いが望まれるところです。
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