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相続の形態に関しては、これまで見てきた相続放棄と限定承認の2つのパターンの他に、
単純承認というものがあります。
これは、全ての権利義務を相続するもので、相続放棄や限定承認のような手続きは何ら必要ありません。
相続の原則といってよいでしょう。
なお、下記のような場合には、単純承認をする意思表示がなかったとしても、
単純承認をしたものとみなされますので、相続放棄をしようとする場合は、
これらの行為をしないよう注意しなければなりません。
単純承認とみなされる場合。
- 相続財産の全部又は一部を処分した場合
相続人が、自分のために相続があったことを知って、又は相続があったことを確実に予想しながら、
あえて相続財産を売却したり故意に壊したりした場合は、単純承認をしたものとみなされます。
ただし、相当な形見分けや身分相応の葬式費用の支払いなどをしても単純承認にはなりません
(貴金属などの高価なものの形見分けは、処分行為に当たる場合もあります)。
- 処分行為に当たる事例
不動産の売却、家屋の取り壊し、売掛金の取り立て、被相続人が受取人となっている保険金の受け取り
- 処分行為に当たらない事例
相当な形見分け、身分相応の葬式費用の支払い、家屋の修理、腐敗の恐れのある物の売却、短期の賃貸借(土地は5年、建物は3年、動産は6カ月以内)
- 相続放棄も限定承認もせずに3ヶ月の熟慮期間が過ぎてしまった場合
ここでの3ヶ月の期間は、相続人が複数いる場合においては、最後に期間が満了する相続人を基準とします。
よって、例えば相続人のうちの1名において期間が経過してしまっても、
他の相続人においてまだ期間が経過していなければ、その期間が経過するまでは全員で限定承認が可能です。
- 相続人が限定承認又は相続放棄をした後でも、相続財産の全部又は一部を隠匿し、ひそかにこれを消費し、
悪意でこれを財産目録中に記載しなかった場合
ただし、相続人が放棄したことによって代わって相続人となった者が単純承認をした場合、
後に放棄者がこのような行為をしても、単純承認とはみなされません。
このような場合にまで単純承認とみなされると、代わって相続人になった人に損害を与えてしまうためです。
このような隠匿や消費行為があった場合、代わって相続人となった人は、損害の賠償を請求することも可能です。
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