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被相続人から遺贈を受けたり、生前に贈与を受けていた者がいる場合、その受けた遺贈や贈与の価額が、
その者の相続分の価額に等しいか、もしくはこれを超えている場合、相続人間の公平のため、
その相続人には相続分がないこととされ、遺産を取得することができません(民903条)。
この場合に作成するのが、自分には相続分がないのだということを自ら証明する「相続分がない旨の証明書」です。
「相続分がないことの証明書」「特別受益証明書」「相続分不存在証明書」などといわれることもあります。
この相続分がないことの証明書は、主に不動産があって、相続登記をする必要がある場合に、
相続登記の添付書類として法務局へ提出するために作成され(実印を押印して、印鑑証明書も添付します。)、
ある相続人の相続分をゼロにして特定の相続人に不動産の名義を移すという、
事実上、相続放棄と同じ目的を達成するために用いられます。
相続放棄をするとなると、3ヶ月の期間制限があり、また家庭裁判所に対し、
相続放棄の申述といった法的手続きが必要になります。 また、遺産分割協議書によっても目的は達しますが、
分割協議が複雑長期化することもあるため、より簡便に相続登記を終える方法として、
このような書類が用いられるわけです。
しかし、相続分がないことの証明書によって、プラスの財産は相続しなくても、
正式な相続放棄とは異なり、被相続人のマイナスの財産は承継するため、
後日債権者からの取り立てを受ける恐れがあります。
また、実際に生前贈与を受けているのであればまだしも、そのような事実が一切なかったにもかかわらず、
贈与を受けたことを証明すれば、税務当局から贈与税を問われる恐れもないとはいえません。
さらに、後日相続人間で、贈与があったなかったのトラブルの火種にもなりかねません。
このような相続分のないことの証明書に署名捺印を求める場合は、
相手方からハンコ代としていくらかの金銭を提示してくることがありますが、
実際の遺産額に照らして、その金額で納得がいくのでなければ、安易に署名するべきではないでしょう。
ハンコ代の金額によっても、これが金銭の贈与に当たるのではないかといった税務上の問題もあります。
そのような場合は、遺産分割を請求し、遺産分割協議書を作成するのが無難でしょう。
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